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【ニュース】自治体合併のあり方

読売新聞の企画連載「対論激論」に、市町村合併についての記事が載っていました。

合併しない宣言をしている早川町の辻町長と山梨県総務部の矢崎主幹が、それぞれの立場から合併問題を語っています。
読んでみると、どちらの言い分も間違いではなく、立場の違いであることは十分理解できますし、合併にも単独存続にも一長一短があると思います。

ただ、合併は地域の問題を解決する特効薬ではありません。
単独で行政サービスを維持できない市町村同士が苦し紛れや責任回避で合併してもうまくいくはずはありません。
理想論になりますが、単独でも十分やっていける市町村がより効率的なサービスのために合併するのが本筋だと思います。

どちらを選ぶにしても、過疎化の進んだ市町村は厳しい選択を迫られています。
行政だけに任せるのではなく、住民が自主的に地域のあり方を考えていく必要があります。

(以下YOMIURI ONLINEから引用)
「平成の大合併」で県内は64から28市町村となった。県は、人口30万人規模の中核市と10万人規模の6市に集約する構想を描き、一層の合併を市町村に勧める構えだ。今後の自治体合併はどうあるべきか。「合併しない宣言」をした早川町の辻一幸町長と、県総務部地域振興担当の矢崎茂樹主幹に聞いた。聞き手 山田佳代

◇地域が取り残される

【早川町長 辻一幸氏】

 ――「合併しない」と2002年に宣言した。その理由は。

 必ずしも合併に反対なのではない。ただ、アンケート(01年)で多くの住民が合併に否定的だったからだ。

 早川町は約50年前に6村が合併して一つの町になった。当時、住民にとっては町内で格差が広がり、これまで恩恵を受けてきた行政サービスが遠のいた、という苦い経験があった。その経験があるから、今の住民は合併はしないという選択をしたのだと思う。

 早川町は南北に長く、端から端まで行くのに2時間かかる。現在でも、南北の住民の行き来はほとんどない。ただ、前の合併から50年がたち、やっと町民意識が芽生えてきたといえる。だから今、ほかの地域と合併しても、住民の間には新たな自治体に属するという意識はなかなか定着しないのではないか。

 ――「行政サービスが遠のく」という意味は。

 例えば、町が現状のままで合併した場合、人口比を考えると、町内から議員を1人も出せなくなる可能性がある。役所は分所が置かれるだけだ。その時、早川町の声は果たして行政に反映されるのか、との疑問がある。合併することで、この地域が取り残されるという不安もある。

 ――今後の合併は考えていないのか。

 今のところ、02年の選択は間違っていなかったと思う。将来的にはどうなるか分からないが、当面の間、合併する予定はない。

 ――合併しないことで財政面の厳しさはないのか。

 県内では、それぞれの地域で模倣的に合併が行われたが、財政状況が改善されていない地域も多い。合併すればすべてが解決する訳ではない。たとえ合併をしなくても、私の月給や職員の手当をカットするなど財政改革を進めて、なんとか(住民サービスのための)財源は確保している。職員が節約して身の丈にあった行政を行えば、しばらくはやっていけないことはない。

 早川町の場合、多くの事業費を切りつめても、教育と福祉には金をかけてきた。重要なのは取り組むべき課題の優先順位だ。合併したおかげで、最も町民に大切な(生活の)保障が後回しにされるのであれば、本末転倒といえる。

 ――町の人口は20年前と比べると45%減り、現在は1500人を切っている。不安はないのか。

 日本の人口はこれからどんどん減少していく。そういう意味では、早川町は日本の“先進的地域”と言える。もちろん、人口が増えないと(町政にとって)厳しいことは否定できないが、人口が少ないことが必ずしも悪いという訳ではない。たとえ人口が1万人だったとしても、その町民が不幸だったら、とてもいい町とは言えない。

 人口が1500人でも、多くが幸せな生活を送れるのであれば、その方がいい町と言えるのではないだろうか。


◇高度なサービス可能

【県総務部主幹 矢崎茂樹氏】

 ――なぜ自治体合併が必要なのか。

 どこの自治体も厳しい財政状況で、今後求められる行財政運営を実現していくのが難しくなっていく。合併をすることで、しっかりした財政基盤を築き、行政能力の高い自治体をそろえる必要がある。

 将来的に道州制が導入されると、県の仕事が州と市町村に移譲され、住民に直結する行政サービスは、すべて市町村で担うようになっていく。導入を視野に、市町村が幅広く行政サービスを決定し、責任をもって実行していけるようにしなければいけない。

 ――これまでの合併の効果は。

 合併時にはシステムの統合などで経費がかかり、歳出が一時的に増えることはあったが、中・長期的な視点で考えなければいけない。目に見える効果もある。例えば、旧秋山村には図書館がなかったが、上野原市と合併したことで、図書館の分館ができた。

 ――合併が進むとどんなメリットがあるのか。

 住民に一番近い位置にある市町村がそれぞれの判断で、多様で高度なサービスの決定・実行ができるようになる。例えば、自治体の規模が拡大し、林業や農業の専門家を雇うことが出来るようになれば、遊休農地や、手の入れられていない山林も減らすことができるだろう。合併で「町」から「市」になれば福祉事務所を置くことができるなど、幅広いサービスの提供が可能だ。

 ――合併をせずに行革を進め、財政確保を目指す自治体もある。

 規模が小さな自治体は、行財政改革を行っても、財源の確保に限界がある。財政基盤を安定させるためには規模を大きくする必要がある。

 ――行政サービスが遠のくとの懸念がある。

 合併時には、住民同士が話し合い、各地域の事情を考慮した形で合併を進める。地域の声がしっかりと行政に反映されるようにしていく。

 小さな自治体なら、下水道工事のお願いをすると、顔見知りの担当者がすぐに処置をしてくれるが、合併後は(職員の少ない)分所になってしまうため、多少は時間がかかり、行政が身近に感じられないということはあるかも知れない。ただ、仮にそういう声が出るのなら、十分に耳を傾けて改善していけばいい。

 ――すべての行政サービスが効率化されるのか。

 ある地域が特定の行政サービスに力を入れている場合がある。合併して、ほかの地域の水準に合わせた場合、その行政サービスは後退することもある。しかし、それはサービスが適正な水準に戻るだけだ。最近は、あらゆることを行政に頼るようになっているが、本来は行政がやるべきでない仕事もある。住民同士の助け合いや民間の力を活用することで、行政の役割を明確にすべきで、行政のあり方についての議論が必要だ。

 ◆県の合併構想◆ 最終的に、県内を甲府を中心とした人口30万人規模の中核市と、富士吉田市と富士河口湖町、鳴沢村、忍野村、山中湖村を合併して富士五湖市とするなど、10万人規模の6市にする。2006年3月、県の「市町村合併推進構想」で示された。まず、(2010年3月を期限とする)新合併特例法下で実現すべき組み合わせとして、早川、身延両町など5地域での合併を提示した。県の構想は、住民の生活圏を踏まえ、〈1〉人の行き来が多い地域〈2〉山越えせずに交流が可能など地理的に無理が生じない組み合わせ〈3〉住民の意向――など七つの視点に基づいて策定された。

 平成に入ってから県内の市町村数は64から28になり、減少率56・3%は全国15位。ただ、1市町村当たりの平均人口は約3万1500人で、全国平均(6万6119人)を大きく下回る。

<街の将来像 話し合いを>

 厳しい財政状況が続き、少子高齢化が加速する。新合併特例法で2010年という期限が定められ、道州制論議も進む。地方自治体の内外には、「合併ありき」のレールが敷かれている。

 取材の中で、「どんな合併が望ましいか」という枠組み論が先に立ち、「どんな街にしたいか」という議論が不十分ではないかと感じた。

 市町村合併の目的は、自治体の財政状況を改善するとともに、住民の望む行政サービスを提供できるようにすること。合併は、理想の街づくりを実現するための手段の一つに過ぎない。

 合併について考えるとき、街の将来像を十分に話し合っているだろうか。自治体に何を求めるのか。そのために最もふさわしい手段は何か。合併すれば実現するのか。

 改めて考えてみる必要があるかもしれない。(山)
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